概要
トレンドフォロー系指標の代表的存在で多くの投資家に重用されています。
ラインのアングルでトレンドの方向と勢いを知ることができ、かつ他指標と組み合わせて使用する際にも使い勝手がいいので非常に頼りになる指標です。
テクニカル分析と言えば、まず長短移動平均のクロストレードが思い浮かぶかと思います。
初心者の時に使用するも長短移動平均のクロストレードでは勝てないことを知り、次第になんとなくネーミング的に勝てそうな他のテクニカル指標をいろいろ試行。
しかし、
どんなに複雑な指標をもってしてもアメーバーのように変動する相場を捕捉することはできないことを学び、最終的には移動平均主体のシンプルなトレードスタイルに回帰していくという流れが多いのではないかと思います。
移動平均線にはいくつかの種類がありますが、テクニカルで主に使用されるのは次の3つです。
●単純移動平均線:MA(Moving Average)又は SMA(Simple Moving Average)
一定期間の価格の平均値をグラフ化したものです。
●加重移動平均線:WMA(Weighted Moving Average)
直近に近ければ近いほど順次重みを大きくしていく平均値です。
SMAの欠点である遅行性を改善する為に考案されたものです。
●指数平滑移動平均線:EMA(Exponential Moving Average)
直近の価格をより重視した累積加重平均です。
やはりSMAの欠点である遅行性を改善する為に考案されたもので、MACDやRSI(ワイルダーバージョン)で使用されている移動平均線です。
一概にどのMAが優れているかは判断できません。
SMAでなくWMAやEMAを採用することは遅行性改善の為の一手ですが、早めの仕掛けができるというメリットがある反面、時期尚早でだましに会う確率も高くなってしまうという副作用も生じてしまいます。
個人的には、だましをいかに防ぐかがシステム作りの肝だと思っていますので、SMAを重用しています。
計算式
ここではSMAとEMAの計算式について説明していきます。
WMAに関しては遅行性の改善という点に関してはEMAの方が有効ですし、算出に手間がかかりますから敢て使用する必要性は感じませんので省略させていただきます。
単純移動平均線
当日MA={当日の終値+前日の終値+ ~ +(1-平均日数)前の終値}÷ 平均日数
例 1日目:20、2日目:30、3日目:40とすれば、 3日移動平均は(20+30+40)÷3=30となる。
指数平滑移動平均線
計算可能日初日は前日のEMAがないので当日EMA=当日MA
2日目以降は
当日EMA
=前日EMA+(当日終値-前日EMA)× 平滑化係数
=前日EMA+(当日終値-前日EMA)× 2 ÷ (平均日数 + 1)
計算式(EXCEL)
単純移動平均線(SMA)と指数平滑移動平均線(EMA)のEXCEL計算式です。↓
便宜上、平均本数は5本にしてます。
活用例
●誰でも知ってる長短線のクロストレードですが、これだけではご存知のように結果は悲惨になります。
例えば、
長期線の傾斜を判定、
一定以上の傾斜で長期線が上昇中に短期線が長期線を上抜いた場合に買いエントリー、
一定以上の傾斜で長期線が下降中に短期線が長期線を下抜いた場合に売りエントリー等
の条件にすれば、ただのクロスによるサインに比べて「だまし」をある程度回避できます。
上記の例では平均期間の異なる平均線のクロスをトリガーにしていますが、同一平均期間のSMAとEMAのクロスをトリガーにしても面白いかと思います。(上記のチャート参照)
SMAの傾斜を判定、
一定以上の傾斜でSMAが上昇中にEMAがSMAを上抜いた場合に買いエントリー、
一定以上の傾斜でSMAが下降中にEMAがSMAを下抜いた場合に売りエントリー等
●トレンドは長期線の階差をとって傾斜をみることで判定し、他の指標の同一方向のサインをトリガーとして使用する。
ブレイクアウト系システムでも、
ブレイクアウトした方向が平均線の方向と同一方向の場合にのみサインを出すようにすれば、「だまし」に合う確率は低下します。
●移動平均を求めるには通常、終値を使用しますが、それだけでなく、始値、高値、安値、仲値(4本値の合計/4etc.)等を使用することでシステム作りのアイデアが広がっていきます。
●分足使用で波動を利用するシステムの場合、遡る期間をあまり短くしてしまうと、波長がピッタリ合った場合は大きな利益を上げることができても、合わない局面では逆逆に動かれ大きな損失を出してしまう可能性が高いので、平均期間はある程度長期にした方が安定した利益を上げやすいかと思います。
一般的なパラメータ設定
●時間足の場合
足種に関係なくどの足種でも5、25、75のパラメータセットを使われている方が多い気がします。
運営者の場合、主に5分足では12本の倍数、15分足では4本の倍数でパラメータセットを組んでいます。
●日足の場合
短期:5日、中期:25日、長期:75日(この他に大局を見る為に200日もよく使用されています)
●週足の場合
短期:13週、中期:26週、長期:52週
●月足の場合
短期:6か月、中期:12か月、長期:36か月
まとめ
至極単純な指標ですが、移動平均線もしくは移動平均線派生指標は使い勝手も良く他の指標との相性もよいので数ある指標の中の主役的存在と言っても過言ではないかと思います。