メインターゲットが日経225先物、開発ツールはExcel(関数およびVBA)という前提で話を進めていきます。
シストレはいくつかの強みを有しており資産形成の際の有効な手段の一つであることは間違いありません。
ただし、いくつかの弱点も有しています。
シストレで成功するためには、
どうすれば強みの部分をより生かすことができるか、どうすれば弱点を克服していくことができるか等を検討し具体的な対策を講じていくことが必要不可欠です。
ということで、
ここではシストレがどのような長所と弱点を有しているのかを確認しておきたいと思います。
メリット
バイアス、感情、情報等に振り回される事なく取引できる。
裁量トレードにおいては意思決定時に、各種バイアス等の影響を受けて不合理な判断を下してしまうことが多々あります。
裁量トレードでなかなか結果を残せない原因の一つです。
エントリーの際、
いろいろなバイアスに囚われて誤った判断を下してしまったり、
あまたの情報を処理できず、
迷いが生じてエントリーをためらってしまった結果、
利益を上げる機会を喪失してしまったり、
利益を確定しておけばいいものを欲にかられて決済が遅れ利益を減らしてしまったり、
いつかは戻ってくれるだろうという根拠のない希望的観測で損切が遅れ損失を拡大させてしまったり。
etc.
バイアスを排除し、
欲望や恐怖にも打ち勝ち、
常に感情を制御してクールな判断を下し続していくことは本当に難しいものだと改めて思います。
その点、
システムの運営者が必ずシステムのサインに完全に従って運用するという前提であれば、シストレの場合は感情や情報に惑わされずに一貫性をもった取引が実行されますから上記のような無駄な損失や機会喪失は発生しません。
一定の評価を得たシステムを運用するという前提であればある程度確率の高い利益を見込める。
裁量トレードにおいて売買を選択する際の判断基準となるのは数値化されていないファジーな過去の経験や情報、そしてヒューリスティック(直感)です。
システムの場合はそのようなあいまいさは全て排除されます。
過去データのエッジを洗い出した上で構築しますから、ターゲットを取り囲む環境になにかしらの劇的な変化が起きて過去データが使いものにならなくなるような状況にならない限り一定基準以上のパフォーマンスを有するシステムであれば成功する確率は高くなります。
ただし、
システムを評価した際のバックテスト用の過去データには相場の多種多様な局面がある程度盛り込まれていることが最低条件です。
少なくとも数年間できれば10年以上の過去データでの検証を経て一定以上と評価されたシステムを運用することが前提です。
短期間のテストしかできなかったシステムでリアルトレードに突入すればほぼ確実に失敗します。
3年間の成績は良かったのに4年目は全く駄目なんていうことはシストレの世界ではごく当たり前に発生します。
そして、もう1点忘れてならないことは運用するシステムはリスクが最大限抑制されたシステムであること。
いかにリターンを大きくするかよりも、いかにドローダウンを小さく、かつフラット期間を短くできるかに主眼を置いた堅牢性重視のシステム作りがシストレで成功するための第一歩です。
どんなにリターンが大きいシステムでも、リスクが大きければ長期的に運用していくことはほぼ不可能です。
シストレは長期的に運用できてなんぼです。
実戦に入る前にきめの細い資金管理シミレーションができる。
資金管理シミレーションによって、許容しうるリスクの範囲内でどれくらいのリターンが得られるかを計数化できるので的確なポジションサイジングが可能です。
同じシステムを使用してもポジションサイジング次第で結果は大きく変ってしまいます。
どんなに優れたシステムでもポジションサイジングを誤れば即市場から撤退ということもあり得ます。
トレードスキルが高く、
感情もコントロールでき、
かつ生来備わった資質も有している優秀な裁量トレーダーにシステムで勝つことはほぼ不可能です。
ただし、システムトレーダーが唯一優位に立てるとすればこの点かと思います。
優秀な裁量トレーダーの中には取引履歴を全て記録して、過去の取引の勝率、PF、POR,平均損益、ドローダウン等を算出して取引に生かしている方もいらっしゃるかとは思いますがそこまでやられている方は少数派なのではないかと思います。
一定の枚数を投入していくマネーマネージメントであるならそれ程問題はないと思います。
しかし、複利で枚数を増やして戦っていく場合は過去データでの詳細なシミレーションは不可欠です。
根拠なく勢いで枚数を増やしたりすれば、即市場から撤退などということになりかねません。
シストレであれば、許容できるドローダウンの範囲内で口座資金の内どれくらいの金額を投入できるか等のシミレーションはお手の物です。
システムトレードの最大の強みです。
Excelを使うことでシステム構築や検証が楽になる。
サインを発生する部分はプログラミングで行うよりもシートにExcel関数を埋め込んで行った方がはるかに楽です。
1つのサインを発生させるためには、数多くの条件の真偽を判断しなければなりません。
それをプログラムで実現するとなるとかなり複雑になってしまいます。
EXCEL関数を使用する場合でも一つのセルで売買を判定しようとすと同じように条件分岐の階層が深くなり過ぎて複雑化してします。
しかし、条件分岐の階層が浅く済むように一つのセルで判断する条件は単純化して取り敢えずそれぞれで売買サインを出し、それらをコントロールするセルで最終的な売買サインを発生させるようにしてやれば、サイン発生部分がシンプルになり構築しやすくかつミスも出にくくなります。
修正時や検証時も楽です。
表計算の持つ視認性に優れているという点も大いに寄与してくれます。
余談ですが、
今やExcelはビジネスシーンにおいて欠かせないツールとなっています。
システム作りを楽しみながらExcelの関数やマクロについて学べますし、自動売買ロボットを作成するのであればVBAでプログラミングも学べます。
これからプログラミングを学びたい方や、将来的にIT業界への転職を考えていらっしゃる方にとっては自動売買ロボット作成は面白いテーマになるのではないでしょうか?
Excel VBAでプログラミングができるようになれば、どの言語も制御の流れは同じ、コードや環境が異なるだけですから、例えばPython等の他言語を学ぶ際にも大きな力となってくれるはずです。
IE操作で発注をするのであれば作る過程でスクレイピングの技術も習得できます。
それによってネットでの情報収集スキルを向上させることができますので、今後の仕事の効率化にもプラスになっていくと思います。
デメリット
実戦で戦えるシステムを構築するには多くの時間と労力を要する。
ターゲットは日々刻々と変化し続けていく掴みどころのないマーケットです。
どの局面にも通用するような魔法の法則は存在しません。
過去データからわずかな優位性や傾向性を見いだし、それらをなんとか紡いで実戦で戦っていけるシステムを完成させなければなりません。
これが本当に難しいところです。
既述していますが、
3年間位連続してそれなりの成績を残す程度のシステムであれば、なんだこんなものかと言うくらい簡単に開発できてしまうこともあります。
が、相場の局面が変化した途端、システムが全く機能しなくなってしまった等という事は日常茶飯事です。
トライアンドエラー、そしてスラップスクラップアンドビルドの連続です。
仮に上記の壁を乗り越えて、それなりのシステムが完成したとします。
しかし、ゴールはまだまだ先です。
時間足使用のザラ場システムとなるとサインファイルに加え、自動売買用のロボットファイルも構築しなければなりません。
きっちり動くロボットファイルの開発には相当な時間と労力を要します。
シストレで成功するためにはどうしても乗り越えていかなければならない厚い壁です。
運用時の心理的負担が大きい。
長所のところで既述ですがシストレはことサイン判定段階においてはエントリーの都度頭を悩まされるということはありません。
そういう点では裁量トレードに比べればメンタル的にはかなり楽です。
しかし、運用段階では裁量トレードよりもメンタル的負担は大きいと言っても過言ではないかもしれません。
好調な時はいいのです。
しかし、相場はきまぐれです。
一定以上のパフォーマンスを持つシステムでも年に何度かはどうにも合わない相場局面に遭遇してしまいます。
連敗が続き、ドローダウンが続く憂鬱な日々の連続。
フラット期間(ドローダウンが解消されず最大利益を更新できない期間)が長くなってくると、このまま永久に負け続けるのではという悲観的な感情に心は支配されていきます。
フラット期間は営業日ベースで半年以上から1年程度続くこともあります。
カレンダーベースではそれ以上です。
最大利益を長期間更新できないわけですから、その間の心理的負担は多大です。
裁量トレードであれば「調子が悪いからしばらくトレードを休もう」ということもありです。
しかし、シストレの場合はそれは許されません。
いかに厳しい状況になってもあらかじめ定めておいた撤退ルールに抵触しない限り、日々休まずにサイン通りにシステムを運用していかなければ意味がありません。
そこがかなりつらいところです。
その期間中の心境は一種の穴掘り拷問に近いものがあります。
穴を掘らされ、
掘った土で穴を埋めさせられ、
また、穴を掘らされ、、、、
永遠とその作業を続けさせられるような感覚。
毎日毎日、なんと無毛な事をしているのだろうかという思いとの葛藤の日々です。
仮に残高がほぼ横ばいで推移したとしても、負けた時のダメージは勝った時の高揚感の2前後にも相当しますから、徐々に心は疲弊。
ついには、
その感情に屈してシステムの運用を中止してしまったり、ルールよりも投下枚数を少なくしてしまうような不合理な行動をとってしまいがちです。
もうこのシステムは機能しなくなったのではという思いがシステムに対する信頼を上回ってしまい、結果、「ここで止めれば楽になるぞ」という悪魔のささやきに負けてしまうわけです。
そうならないためには、
本番運用前にシステムに対する信頼を揺るぎないものにしておくしかありません。
そのためには、まず、
多少のリターンの減少には目をつぶってでもリスクの低減化にポイントをおいた堅牢性の高いシステム作りが必須です。
できれば、そのようなシステムを何本か創出し、それらのシステムでポートフォリオを組んで運用することで単体レベルでのリターンの減少をカバーしてやります。
そして、それらのシステムで、
リスクマネジメントに主眼をおいた資金管理シミレーションをシステムへの信頼がゆるぎないものになるまで徹底的に繰り返し、リターンとリスクのバランスを考慮した最適な投資配分を見いだし、心底から納得ができた段階で初めて本番運用に移行します。
この問題の唯一の解決方法だと思います。
いい加減な気持ちで向き合うと短期間に市場から撤退させられる可能性が大きい。
システムを評価する段階でリターンを重視するあまりリスクの評価がおざなりになってしまったシステムやトータルのリターンは大きいものの年度ごとのパフォーマンスに大きなバラツキがあるシステムを採用してしまった場合、システムに合わない局面に遭遇した途端、あっと言う間に口座残高が消えてしまうというようなことが多々見受けられます。
上記の問題がクリアーできパフォーマンス的に問題のないシステムを開発できたとしても、運用時のマネーマネジメントがいい加減であれば、やはり市場から早期撤退を強いられてしまいます。
リスク重視のパフォーマンス評価、そして本番環境に近い形での徹底した資金管理シミレーションでの投資配分の最適化、シストレで成功するための優先事項です。
極端にせまいレンジ幅で上下する局面や短周期で大きく上下するような荒れた局面では利益を上げにくい。
このような局面は裁量トレードにとっても難しい局面ですが、システムトレードはなにかしらの傾向性や優位性を根拠にシステムを構築しているわけですのでさらに厳しい局面となります。
このような局面で
トレンドがある時と同様なエントリーを繰り返していてはかなり高い確率で大きな損失を出してしまいます。
トレンドレス局面をなにかしらの方法で把握して無駄なエントリーを抑制するロジックをシステムに組み込んで損失を抑える必要があります。
まとめ
以上、簡単に225×Excelシストレのメリットとデメリットについてみてきました。
メリットも多いシストレですが、既述したようにいくつかのデメリットも有しています。
デメリットの一つ一つがシステムトレーダーの前に立ちはだかる高く厚い壁です。
それらの壁を乗り越え、打ち破っていかなければシストレで勝ち続けることは困難です。
壁を乗り越えることは簡単なことではありませんが、創意工夫し根気よく挑み続ければ可能な事だと運営者は思っています。
そして、そのプロセス自体がシステムトレードの魅力の一つなのだとも思います。
Excelプラットフォームのシステムトレード、楽しみながらExcel関数やVBAプログラミングを学べます。
学生の方や社会人の方であればキャリアアップの一助にもなりますし、仮説を立てたり、それをExcelの関数で表現したりと頭も使いますからシニアの方の脳トレとしても有効かと思います。
あ~だこうだと仮説を立て、苦労してExcelシート上に具現化、バックテストでほぼ思い通りの結果が出た時の喜びはなかなかのものです。
なかなか遭遇しませんが。(笑)