選出したシステムでポートフォリオを組んで実施した複利運用前提資金管理シミレーションの概要です。
これまでもシステム単位での資金管理シミレーションは本番運用前にザクっとではありますが実施してきました。
しかし、ポートフォリオを組んでの複利運用前提の資金管理シミレーションは今回が初めてでした。
今回のシミレーションではシステムの評価ポイントも変えてみました。
過去のバックテストの検証では、フラット期間の長さがモチベーションの低下に大きくかかわっていることを認識しながらもリターン関連の評価指標の方に目がいってしまい、結果的にリスク評価が不十分になってしまっていました。
その点を反省し、今回はドローダウンの大きさやフラット期間の長さと出現頻度に重点をおいて検証。
結果としては大変有意義なシミレーションとなりました。
以下がシミレーションの概要です。↓
シミレーションの前提条件
使用システムについて
現時点で生き残っているシステムの中から、リターンの大きさではなく堅牢性に着目して3本を選出。
3本とした理由ですが、3本の矢や正三角形のイメージでお互いをフォローし合ってくれるのではという淡い期待感からです。
あまり多いと管理が面倒ということもありますし。
選出した3本についてはさらなるドローダウン低減・フラット期間短縮を狙ってフィルターを厳格化。
ボラ極小のトレンドレス局面のフィルターは当然組み込んでいましたが、今回は大きく利益を積み上げられる可能性が高いボラ大局面でも極端に大きい場合はエントリーを回避するように設定。
それにより2013年のようなトレンドの強い局面でのリターンが減少してしまうというデメリットが生じてしまいますが、波長が合わない場合に大きく崩れてしまうというリスクをかなり軽減できるというメリットを優先しました。
長期複利運用前提ですので、とにかく堅牢性を重視、局面の変化に伴うリターンとリスクのブレを極力小さいなものにしたいということで、取引数減少によるリターンの減少には目をつぶりました。
システム単位ではリターンが減少したとしても、より質を高めた3システムによるポートフォリオ運用でその部分は十分カバーできると判断した次第です。
1.日中寄引システム
・システム名称:DayUpDown:略称DUD
・ターゲット:日経225先物ミニ
・対象セッション:日中取引
・使用足:日足
・パフォーマンス:
DUDシリーズは本システム以外に2本生き残っています。
1本は本システムの母体となっているシステム(海外指標のフィルター未使用)、もう1本は本システムとは海外指標のフィルターが異なるもの。
今回選択したシステムは他システムよりサイン発信条件をかなり厳しくしている関係上、取引回数が少なくリターンは他のシステムよりかなり劣りますが、堅牢性の高さを重視してチョイスしました。
2.5分足ザラ場ディトレ自動売買システム
・システム名称:AfterLunchAttack:略称ALA
・ターゲット:日経225先物ミニ
・対象セッション:日中取引+夜間取引
・使用足:5分足
・パフォーマンス:
これまでのところドローダウンが小さく、堅牢性という点では3システムの中では一番かもしれません。
3.5分足ザラ場スウィング自動売買システム
・システム名称:WaveMotionSurfin:略称WMS
・ターゲット:日経225先物ミニ
・対象セッション:日中取引+夜間取引
・使用足:5分足
・パフォーマンス:
スウィングシステムということで日に複数回取引することもあり、取引数は3システムの中では一番多いシステムです。
シミレーション対象期間
2012年1月1日~2020年12月30日
使用したシステムの対象期間中のパフォーマンス
シミレーション対象期間限定のそれぞれのシステムのパフォーマンスは下記の表の通りです。↓
システム名 | DUD | ALA | WMS |
---|---|---|---|
営業日 | 2202 | 2202 | 2202 |
利益日 | 452 | 449 | 504 |
損失日 | 286 | 283 | 319 |
取引日 | 738 | 732 | 823 |
利益合計 | 53270 | 51056 | 83105 |
損失合計 | -26880 | -22377 | -45410 |
損益合計 | 26390 | 28679 | 37695 |
取引率 | 33.51 | 33.24 | 37.38 |
勝率 | 61.25 | 61.34 | 61.24 |
PF | 1.98 | 2.28 | 1.83 |
POR | 1.25 | 1.44 | 1.16 |
平均損益 | 35.76 | 39.18 | 45.80 |
最大ドローダウン | 895 | 755 | 1185 |
注①:WMSは1日に複数回トレードされることもあります。
シミレーションでは損益は日単位で集約したものを使用しています。
その関係上、取引単位の数値とは若干異なっています。
注②:シミレーションでは損益のみを見ているだけで売買サインの有無は見ていませんので、引き分けと取引なしを区別できていません。
ということで勝率は実際の数値と若干ですが異ります。
当初資金
各システム30万円、計90万。
運用方法
複利運用
手数料
使用予定口座の手数料を使用しました。
スリッページ等
手数料の他にシステム損益からスリッページetc.を控除しています。
スリッページは発生しない場合、逆に有利な価格で約定する場合もありますし、局面によってもかなり隔たりがあります。
ということで設定が難しいのですが、過去、一定期間の平均を取った時は新規+決済で約3円前後でしたので、シミレーションでも平均3円程度発生するという前提で設定しています。
ということで、ALAとWMSは新規+決済で3円。
DUDの場合は寄引なのでエントリー時は発生せず。
決済も通常は引け決済ですから発生しませんが逆指値による損切時のみ発生する可能性があります。
過去5回に1回程度の割合で損切が発生しています。
新規+決済で平均1円としました。
その他に、取引枚数が多くなった場合も考慮しました。
自分の枚数で約定値を引き上げもしくは引き下げて不利な約定にしてしまうことも有り得ます。
その対応として、取引枚数が100枚以上の場合はスリッページの他に5円控除する設定にしています。
年度末における税金の扱い
年度末には税金分として利益の20.315%を口座から引き落とすという設定です。
投資枚数の算出方法(ポジションサイジング)
算出時点の全口座の税控除後残高(注) × システムごとの投資割合(%) ÷ 100 ÷ 枚数算出用基準価格
この結果の小数点第一位を切り上げます。
枚数算出用基準価格は金額が大きければ投資割合が減少、少なければ増加するだけですのでいくらでもいいのですが、本シミレーションでは20万円としています。
(注)税控除後残高:年損益がプラスの場合は利益の20.315%を税とみなした残高
投資割合を決定した際の目安
●リターン
・年平均利回り:100%以上
●リスク
個人的には、モチベーションを維持しながら運用を継続していくためには残高ベースの最大ドローダウン率は25%程度が、フラット期間は半年程度がほぼ限界値です。
相場環境の変化で過去の数値が更新されてしまうことは当たり前に発生します。
ということで、シミレーションの段階ではより厳しい数値を設定、
・最大ドローダウン率:15%以下
・残高ベースフラット期間:100営業日以下
を目安として投資割合を決定しました。
シミレーションの前提条件内容と結果
前提条件パラメータ
シミレーションの結果、
各システムの投資割合が20%程度であれば上記の目安をほぼクリアーできることが判明。
下表は投資割合の組み合わせの1例とその他のシミレーション前提条件です。↓
●システム別投資配分等
システム名 | 投資配分(%) | 手数料(円) | 想定SPG(円) | その他控除(円) |
---|---|---|---|---|
DUD | 18 | 54 | 1 | 5 |
ALA | 20 | 86 | 3 | 5 |
WMS | 19 | 77 | 3 | 5 |
●残高情報等
元本 | 900000 | 円 | ||
口座(DUD) | 300000 | 円 | ||
口座(ALA) | 300000 | 円 | ||
口座(WMS) | 300000 | 円 |
●その他
枚数算出用基準値 | 200000 | 円 | ||
税率 | 20.315 | % |
(補足)
・SPGはスリッページの略
・手数料はミニ1枚往復(消費税込み)
・1回当たりの投資枚数の計算式
全口座の税控除後残高×(投資割合/100)/枚数算出用基準値(小数点以下切上)
・その他控除は投資枚数が100枚以上の時に発生させる
シミレーション結果
●上記の投資割合で3システムを運用した場合の結果です。↓
年度 | 税引後残高 | 最大DD率 | 年利回り |
---|---|---|---|
2012 | 1394154 | 6.80 | 55 |
2013 | 4180565 | 8.31 | 200 |
2014 | 8474577 | 10.84 | 103 |
2015 | 19963602 | 6.74 | 136 |
2016 | 45774168 | 11.58 | 129 |
2017 | 68546743 | 7.91 | 50 |
2018 | 163620682 | 6.47 | 139 |
2019 | 297205056 | 7.77 | 82 |
2020 | 589268077 | 11.25 | 98 |
最大 | 11.58 | 200 | |
最小 | 6.47 | 50 | |
平均 | 8.63 | 110 |
(補足)
・残高は手数料、税金等を控除後の金額
・DDはドローダウンの略
・最大DD率の計算式
{DD額/残高*100}の最大値
・年利回り
当年度末残高/前年度末残高*100 - 100
●下記表はフラット期間とその発生頻度の集計表です。↓
期間 | DUD | ALA | WMS | 全システム | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
回数 | 回数 | 回数 | 回数 | |||||
マージン | 残高 | マージン | 残高 | マージン | 残高 | マージン | 残高 | |
1~10 | 63 | 57 | 60 | 51 | 38 | 39 | 171 | 142 |
11~20 | 19 | 17 | 14 | 12 | 17 | 16 | 21 | 23 |
21~30 | 8 | 11 | 3 | 5 | 8 | 8 | 5 | 5 |
31~40 | 5 | 5 | 2 | 2 | 8 | 7 | 5 | 8 |
41~50 | 5 | 2 | 4 | 4 | 3 | 5 | 4 | 3 |
51~60 | 0 | 3 | 3 | 3 | 2 | 1 | 2 | 3 |
61~70 | 1 | 1 | 2 | 0 | 3 | 1 | 0 | 1 |
71~80 | 1 | 1 | 0 | 2 | 0 | 1 | 0 | 0 |
81~90 | 0 | 0 | 1 | 2 | 0 | 1 | 0 | 0 |
91~100 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 |
101~110 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
111~120 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 |
121~130 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
131~140 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
141~150 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
151~160 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 1 | 0 | 0 |
161~170 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
171~180 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
181~190 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
191~200 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
201~210 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
211~220 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
最大値 | 195 | 195 | 149 | 155 | 156 | 156 | 54 | 68 |
シミレーション結果分析
概要
2017年と2019年の低利回り、トレンドレス局面での苦戦は一目瞭然です。
2019年は健闘した方かと思います。
トレンドが一番強かった2013年の利回りが今一なことが気になりましたが、今回のプロジェクト用に極端に値動きが大きい局面ではエントリーを回避するようにシステムを修正していますので、その副作用だと思います。
動きの荒い局面とトレンドの勢いがある局面、きっちりとは判定できませんから仕方がありません。
投資配分を20%程度、
システムの堅牢性で、若干、差異をつけて、
DUD:18%、ALA:20%、WMS:19%
としてみると、
2020年12月までの税引き後の年平均利回りは110%、
残高ベースの最大ドローダウン率は11.58%、
残高ベース最長フラット期間は68日
となり、
投資割合を決定する際の3つの前提条件、
年平均利回りは100%以上、
残高ベースの最大ドローダウン率は15%以下、
残高ベース最長フラット期間は100日以下
を取り敢えず満足しています。
ということで、
当初は投資配分を
DUD:18%
ALA:20%
WMS:19%
として、戦っていこうかと思います。
分散投資によるドローダウン抑制効果
不調の時期が重なってドローダウンが増幅されてしまう懸念もありました。
しかし、これまでのところでは3システムの好不調の波がうまく干渉し合ってくれていて単体運用に比べてかなりドローダウンを抑制できています。
分散投資に大きなメリットがあることが判明しました。
分散投資によるフラット期間短縮効果
ドローダウン率の抑制効果が確認できていますから、当然の帰結ですがフラット期間も短縮されています。
残高ベースの最長フラット期間は68日。
これは極端なトレンドレス局面だった2017年に記録されています。
大幅に短縮されたとは言え68日は営業日ベース、カレンダーベースでは約3カ月、このレベルのフラット期間でも運用にはかなりの忍耐力が要求されます。
これまではシステム単独での運用でしたから、2~3カ月は当たり前、半年から1年に近いフラット期間にも度々遭遇していました。
そのような状況で運用中断に至ったケースも多くありました。
その時点では己の意志薄弱を責めたものです。
改めてこのような結果を目の当たりにすると、徒労感と不安感の中で運用中断もある程度仕方なかった部分もあったのかなという気もします。
ポートフォリオ運用によってフラット期間をかなり短縮できる可能性は高まりました。
とは言え1年に1回程度はカレンダーベースで2カ月以上のフラット期間が発生する可能性があります。
状況によっては半年程度のフラット期間にも遭遇することもあると思います。
それらを念頭に置いて、今度こそは覚悟して戦いぬくぞと心新たにした次第です。
目標年平均利回り
上記の投資割合ですと税引き後年平均で110%という数値となりました。
しかし、これはトレンドが大きく利益を上げやすかった2013年~2016の数値が上に引き上げた結果ですのでこのまま受け入れることはできません。
局面がプラトー期に入ってしまってからはかなり低下してきています。
今後はさらに厳しい局面も予想されますのでもう少しシビアーに見て目標年平均利回りは80%前後としておきます。
まとめ
今回のシミレーションは実に有意義でした。
なぜこれまで今回のようなシミレーションをしてこなかったのか、、、後悔の念が残ります。
今まではとにかく高性能のシステムを作りたいということで開発優先、思いが至りませんでした。
今回のシミレーションの結果をもとに作成したプロジェクト運用ルールです。↓