以前と比べると日経225先物等のデリバティブ(金融派生商品)の認知度もかなり高くなってきました。
しかし、
まだまだ先物という言葉にアレルギーを起こしてしまう方も多々いらっしゃるかと思います。
先物取引
↓
ハイリスク・ハイリターン
↓
全てを失う
↓
素人が手を出してはいけない領域
という感じでしょうか?
しかし、
先物についてある程度知っていただければ、
リスクマネジメントさえしっかりしていれば別にハイリスクな商品ではないということをご理解いただけると思います。
個別株であれ、投資信託であれ、元本保証でない商品はある意味全てリスキーです。
どの商品をターゲットにしようがハイリスクになるか否かは運用側の問題です。
株価が右肩上がりに一方的に上がり続けることはそう多くはありません。
ほとんどの場合、上がれば下がる、下がれば上がるの繰り返しです。
ですから、下げにも強い「売り」から入ることのできる商品についても知っておいて損はありません。
また、日経225先物はシストレのターゲットとしても非常に優れた商品です。
バックテスト用の過去データ、日足4本値データは当然として分足4本値データも比較的容易に取得できますし、個別株のように株式分割等はありませんので価格データの連続性という点でも問題はなしです。
分足使用の自動売買システム作りには最適のターゲットです。
と言っても分足使用の自動売買システム作りはロボットファイルも作成しなければなりませんのでかなり労力と時間を要してしまいます。
そこまではという方にはサインファイル作成だけで済む日足使用のシステムがお薦めです。
分足ベースに比べ対象となるデータ量が圧倒的に少ないのでバックテスト等もかなり楽、それでいて分足ベースにも劣らないパフォーマンスを上げられるシステムを作ることも可能です。
ということで日経225先物入門編ということでちょっとまとめてみました。
では、少しずつ日経225先物について学んでいきましょう。
日経225先物取引とは
一般的に
先物取引とは、
特定の商品を、
あらかじめ定められ期日(満期日)に、
取引時点での約定価格(先物価格)で売買することを
売買当事者間で契約する
取引のことです。
この定義を日経225先物取引に当てはめてみると、
日経平均株価を原資産とする株価指数(注)を、
対象商品の最終決済月(限月)の第2金曜日(休日の場合はその前日)に、
取引時点での約定価格と満期日に算出された特別清算指数(SQ値)とで差金決済することを
売買当事者間で契約する
取引ということになります。
注:最終決済月「限月」が異なる商品が複数存在します
日経225先物取引の特徴
日経225先物取引は下記のようなの特徴を有しています。
・少額資金で取引可能(証拠金取引)
・少額資金で取引可能(ミニの存在)
・期間限定商品(限月を有する)
・夜間取引可能
順にみていきましょう。
少額資金で取引可能(証拠金取引)
証拠金取引とは証拠金(一種の保証金)を業者に預託して、差金決済売買(注)をする取引で、日経225先物のような株式指数先物取引やFX等で採用されている取引手法です。
(注)差金決済売買とは現物の受渡しを行わずに、売りと買いの差額の授受で決済する売買です。
この制度の導入より少額資金でもレバレッジを効かせた大きな取引が可能となっています。
この点は証拠金取引の大きなメリットです。
ただし、過度にレバレッジを効かせ過ぎると短期間で証拠金を失ってしまいます。
その点には注意が必要です。
日中立会終了時点で値洗い(清算)された結果、受入証拠金が最低維持証拠金を下回ってしまった場合には追証(追加保証金)が発生します。
追証を発生させてしまった場合、建玉を維持するには一定期限までに不足分(追加保証金)を口座に入金しなければなりません。
入金できなかった場合は建玉は強制決済され損失が確定されてしまいます。
一般的に値動きが激しくなってきた場合は、損失の拡大と証拠金の上昇が想定以上のスピードで進んでしまいます。
「追証」を発生させないためには、
過度にリバレッジを効かせ過ぎないこと、受入証拠金には余裕を持っておくことを常に心がけておきたいものです。
日経225先物の証拠金所要額は、
日本証券クリアリング機構(注1)がCME(注2)とライセンス契約を結びSPAN(注3)というCMEが開発した計算方法で算出したSPAN証拠金に掛け目(注4)を掛け、そこからネット・オプション価値の総額(注5)を差し引いて算出されます。
(注1) 日本証券クリアリング機構のHPはこちらからどうぞ
(注2) Chicago Mercantile Exchangeの略語。シカゴマーカンタイル取引所、米国のシカゴにある先物取引所。CMEのHPはこちらからどうぞ
(注3) Standard Portfolio Analysis of Riskの略語。CMEが開発したリスクベースの証拠金計算方法。
(注4) 証券会社や時期によりそれぞれ異なります。
(注5) 買いオプションの価値の総額から、売りオプションの価値の総額を引いた額。
少額資金で取引可能(ミニの存在)
日経225先物の上場は1988年9月3日、
その後、2007年7月18日に個人投資家向けに日経225miniが上場され少額での取引が可能となりました。
日経225miniは日経225先物を10分の1に小口化した株価指数先物です。
日経225先物はラージ、日経225miniはミニとも呼ばれています。
ミニ1枚の証拠金は時期によって変動しますが、だいたい数万円から十数万円程度です。
期間限定商品(限月を有する)
日経225先物(ラージ)・日経225mini(ミニ)と言っても、単一の商品が取引されているわけではありません。
資産対象は日経平均株価指数一つですが、それに限月という時間の概念が付加された商品(銘柄)が複数上場されています。
限月(げんげつ)とは期限が満了になる月(最終決済月)のことです。
限月としては1月~12月まで12個あります。
そのうち3月限(「さんがつぎり」と読む)、6月限、9月限、12月限はメジャー限月または四半期限月 、それ以外の限月はマンスリー限月等と呼ばれています。
ここで特別清算指数(SQ:Special Quotation)について触れておきます。
各限月の取引最終日の翌日(各限月の第2金曜日)をSQ算出日(SQ日)といい、SQ日の指数構成銘柄の始値から算出された値をSQ(SQ値)と言います。
満期日前日の日中取引終了時までに決済されなかった建玉はSQ値で差金決済されます。
前述のようにSQは 日経平均株価構成銘柄が全ての寄付値を元に算出されますので、寄り付いていない銘柄があった場合は日経平均株価の始値(注)とは異なった値となる可能性があります。
(注)ある時刻における構成銘柄の平均値で算出、寄り付いていない銘柄については気配値等を使用3,6,9,12月の第2金曜日に算出されるものは「 メジャーSQ 」、それ以外の月の第2金曜日に算出されるものは「 マイナーSQ 」と呼ばれています。
SQによる決済の計算方法は
・売建玉の決済の場合
=(前営業日の清算単価-SQ値)×建玉数×取引単位-(手数料+消費税)
・買建玉の決済の場合
=(SQ値-前営業日の清算単価)×建玉数×取引単位-(手数料+消費税)
です。
約定単価ではなく前営業日の清算単価を使用するので注意が必要です。
その理由ですが、
「 値洗い 」と言って、
証券会社が日々建玉について清算値段による評価替えを行いその差金を受払いしているためです。
夜間取引可能
翌朝6:00までのナイト・セッションもありますので、お仕事等で日中に取引できない方でも取引が可能です。
個別株を保有していて引け後に悪材料が出てしまった場合等のリスクヘッジとしても使用できます。
日経225先物(ラージ)と日経225mini(ミニ)の相違点
日経平均株価指数が原資であることは同じですが、日経225先物と日経225miniとではいくつか相違点があります。
限月の種類
日経225先物取引と日経225mini取引では取引可能な限月が異なるので注意が必要です。
日経225先物(ラージ)取引の場合
3月限と9月限の直近3限月(橙色)、
6月限と12月限の直近10限月(黒色)、
計13限月が取引対象です。
例えば、現在が2012年9月1日だとすると、取引可能な限月は
2012年9月限
2012年12月限
2013年3月限
2013年6月限
2013年9月限
2013年12月限
2014年6月限
2014年12月限
2015年6月限
2015年12月限
2016年6月限
2016年12月限
2017年6月限
です。
9月の第2金曜日の前日の日中取引終了時点で2012年9月限は上場廃止となり取引不可となります。
翌日の満期日の日中取引の開始時から新規に2014年3月限が上場され取引可能になります。
日経225mini(ミニ)取引の場合
日経225先物と同じ13限月に加えて、
マンスリー限月のうち直近の3限月(橙色)、
計16限月が取引可能です。
日経225先物と同様の例で見てみると、ミニの場合は、
2012年9月限
2012年10月限
2012年11月限
2012年12月限
2013年1月限
2013年3月限
2013年6月限
2013年9月限
2013年12月限
2014年6月限
2014年12月限
2015年6月限
2015年12月限
2016年6月限
2016年12月限
2017年6月限
が取引対象です。
取引のターゲット限月
このようにラージ13種類、ミニ16種類の商品が取引対象となるわけですが、実際には取引量が少ないとスムーズな取引ができないので取引対象となる商品は限定されてきます。
ほとんどの場合、
特にデイトレの場合は取引量の多い直近のメジャー限月がメインターゲットです。
運営者もザラバ自動売買システムでミニを取引する場合は自動売買ロボットの方で直近の限月ではなく直近のメジャー限月を取引対象にするように設定しています。
(注:楽天RSSの場合、限月キーという項目がありますのでラージの直近の限月キーと同じキーを有するデータが取引対象です。)
ここで限月に関連する用語を押さえておきましょう。
・ ロールオーバー
スウィングトレードのようにポジションを保有している場合、限月をまたぐ時に満期日が到来する前にいったんポジションを決済し、同時に次限月の同じ方向のポジションを保有すること。
・期近物 (きじかもの)
直近の限月の物。
・期先物 (きさきもの)
直近より後に限月が到来する物。
発注の際にターゲットの限月と異なる限月を取引してしまい「あれ!」等ということも結構あるので限月の扱いは特に注意が必要です。
取引単位と取引額
(1)日経225先物(ラージ)の場合
先物価格の1000倍(1枚)が最低取引単位です。
価格が25,000円であったならば取引額は 25,000円 × 1,000倍 = 2,500万円です。
(2)日経225mini(ミニ)の場合
先物価格の100倍(1枚)が最低取引単位です。
日経平均株価指数が25,000円であったならば取引額は 25,000円 × 100倍 = 250万円となります。
証拠金
日経225mini(ミニ)の証拠金は日経225先物(ラージ)の1/10です。
呼値
呼び値とは売買注文する際の価格の刻み値のことで、
日経225先物(ラージ)の場合は10円、
日経225mini(ミニ)の場合は5円です。
ということで呼値当たりの損益額は、
日経225先物(ラージ)の場合は10円 × 1,000倍 = 10,000円
日経225mini(ミニ)の場合は5円 × 100倍 = 500円
となります。
取引例
・取引時点よりも満期日時点の方が日経平均株価が高くなると判断した場合
買い(「買建てる」、「ロングポジションを持つ」と表現される)から入ります。
結果、SQ値が約定価格を上回っていれば利益、下回っていれば損失となります。
逆に
・取引時点よりも満期日時点の方が日経平均株価が低くなると判断した場合
売り(「売建てる」、「ショートポジションを持つ」と表現される)から入ります。
結果、SQ値が約定価格を下回っていれば利益、上回っていれば損失です。
満期日前でも反対売買(注)によって契約を終了し損益を確定できます。
実際の取引では反対売買による決済がほとんどです。
(注)買い手の場合は「転売」、売り手の場合は「買戻」
まとめ
日経225先物取引はいろいろなメリットを有する魅力的な取引です。
案ずるより産むが易し、ぜひ、トライしてみてください。
ただし、リスクマネジメントを最優先にして。